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【TOA】遣らずの雪が降る前に

 TOA二次創作する!という公約通り書いてきました! BL要素無いのでご安心を。
 ジェイドがフォミクリーを放棄し、ディストを切り捨てる時のお話です。漫画「追憶のジェイド」中の台詞の引用があります。

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 あなたがもしも追いかけてきてくれたなら。
 そうしたら、私も思い留まることができたんです。
 あなたたちにとって私が必要な存在だと、過ちを犯すなと説いてくれたなら、私も道を踏み外すことはなかったのかもしれません。
 すべては擦れ違い、それまでの互いを信じたゆえの、思い違い。
 悲しいことですが、私には分からなかったのです。
 あなたの沈黙の意味が。

 

 遣らずの雪が降る前に



「さようなら、サフィール」
それはあまりにも冷たい別れの言葉だった。その声、その表情の意味するところは理解できても、受け入れることは到底できなかった。
 帝国研究院の一室。フォミクリーの鎮座する実験室で、僕とジェイドは向き合っていた。実験装置は昨日起こった事故によりめちゃくちゃに破壊され、そこらじゅうに物や破片が散らばっている。ジェイドがネビリム先生のレプリカ作成に失敗し、怪我を負った事故。それをきっかけにジェイドはフォミクリーの放棄を決意し、僕にも研究をやめるよう言ってきた。
 もちろんそんなこと認められるはずがない。ネビリム先生の復活はジェイドが先生を失った日に交わした固い約束だ。その誓いを果たすため、十年間ふたりで研究に打ち込んできた。来る日も来る日も、僕はジェイドの助手として、彼の親友として彼を支え、先生を蘇らせることで幸せな子供時代を取り戻そうと、それだけを胸にひた走ってきた。
 それを、それを今更、あっさりと、ゴミのように、捨てろだなんて。ネビリム先生の復活はジェイドも心から望んでいたことじゃないか。先生さえ蘇ればジェイドの苦しみだって晴れて、彼も昔のように笑うことができるようになるのに。どうしてそれを否定するんだ。どうして僕たちの願いに背くようなことをするんだ。
 そして、どうしてその願いごと、親友である僕を切り捨てるんだ―――君のたった一人の片腕として、君の言葉には何でも従い、君のためにすべてを捧げた僕を。
 僕はしばらくジェイドの胸ぐらをつかんだまま放心していた。彼の意志を正しく理解することを、心が拒んでいた。それでも残酷なまでに事実は、僕の心に切り込んでくる。
 ジェイドは僕を、必要としていないのだ。
 悟った瞬間、部屋を飛び出していた。
 まさか、そんな、と頭の中で否定の言葉を呟くが、先ほどのジェイドの声を打ち消すことはできない。どこを目指すかも分からずめちゃくちゃに走り、人影一つない夜の港に辿り着いたところで自然と足が止まった。
 息が切れ、激しい動悸がする。呼吸を整えるために深く息を吸い、吐く。そうして少し、少しだけ冷静になれて初めて、僕は自分が泣いていることに気が付いた。濡れた頬に潮風が冷たく、火照っていた体も次第に熱を奪われていった。
 夜空を仰ぐ。星は見えない。そこに向って叫び出しそうになる自分を必死に抑えた。そんなことをしたところで、その声がジェイドに届くはずがない。声が届いたところで、ジェイドが追いかけてきてくれるかは…分からない。
 僕は波止場に歩いていくと、その縁に腰掛けて海に向かって足を投げ出した。
 一晩。一晩待とう。これは賭けだ。ジェイドがもし迎えに来てくれたら、彼の言う通り研究を放棄しよう。そうすれば、再びジェイドは僕を受け入れてくれる。あの悲しい別れの言葉も取り消してくれるかもしれない。僕のことが必要だともう一度言ってくれるなら、ネビリム先生のことを諦めることも―――やむを得ない。
 もしも、ジェイドが僕を追いかけてきてくれなかったら…。それは、先程の言葉通り僕を完全に見離したということだ。彼が僕を必要とせず、ネビリム先生を復活させることも認めないというのなら、僕はひとりでも研究を続けよう。そうしていつか最高の成果をジェイドに持ち帰り、昔のジェイドを取り戻すんだ。ネビリム先生さえ蘇れば、きっとジェイドは思い直してくれる。
 僕は、ジェイドが僕を追いかけてきてくれる方に賭ける。ピオニーがジェイドにそうしたように、ジェイドも僕を諭しに来てくれるに違いない。
 だって僕はジェイドにとって必要な存在だもの。さっきのジェイドは血迷っていただけだ。すぐに自分の言葉を後悔して、謝りに来てくれるに違いない。僕のことが必要だと、頼むから何処にもいかないでと、呼び止めてくれるに決まっているんだ。そうでなければ、ならない。
「ジェイドは、まだかなぁ」
僕はひとり、陰鬱な夜空に向って呟いた。その声は磯風にかき消され、僕自身の耳にもはっきりと届くことはなかった。



 飛び出していった幼馴染を、呼び止めることはなかった。その最後の表情が私の網膜に焼き付いて離れない。あまりにも悲痛な瞳、言葉を失うほどに衝撃を受けた顔。長い付き合いの中で彼のそんな表情を見るのは、初めてだった。
 それでも私は、先程の宣告を取り下げる気にはなれなかった。私たちはとんでもない過ちを犯していた。それに気づいてしまった以上、もう後戻りはできない。一生をかけても償うことの出ない罪を背負ったのに、これ以上罪を重ねるわけにはいかないのだ。私も、彼も。
 フォミクリーは絶対の禁忌とされるべきだ。今後いくら技術面を強化したところで、倫理的な問題が払拭されることはない。それは人間が死せる存在である限り、越えてはならない境界線なのだ。
 死者は生き返らない。失ったものは取り返せない。時間も、物も。複製を作って代用にしようなどと考えるのは愚の骨頂だ。誰もそんな愚行を犯してはならない。私が犯させない。
 私を諭してくれたピオニーが、皇帝陛下に実験の中止を進言する。フォミクリーは闇に葬られ、誰もその深淵を覗くことはないだろう。かの技術を封印すること、それが開発者たる私ができる、唯一の罪滅ぼしなのだ。
「ジェイド、いいのか?」
聞き慣れた声で、はっと私は現実に引き戻された。いつの間にか実験室の入り口に立っていたジャスパーが、焦ったような顔で私とサフィールが出ていった方とを見比べている。
 私はため息をついて、冷静に言った。
「放っておきなさい。そうしないとあの馬鹿には分からない」
サフィールは、じきに戻ってくるだろう。子供のころから、どんなに苛められたところで、見離されたところで、必ず私を追いかけてきた彼だ。今回だって、背中を見せるふりをして本当は呼び止めてほしかったに違いない。
 そのうち、私が彼を追いかける気がないと分かれば、自分の方から戻ってくるだろう。だらしない洟垂れ顔で。ひどいよジェイド、と悪態を吐きながら。
 彼には私が必要なのだ。必ず、サフィールは思い直すはずだ。自分がどんなに馬鹿なことをしでかそうとしていたか、どうあっても私がそれを認める気がないかを。
 サフィールを追って出ていくジャスパーを見送り、私は背中を壁に預けた。


 
 朝日が昇る。相変わらず空には雲が立ち込めていたが、地平線の近くだけは晴れて、真っ赤なレムを拝むことができた。その眩し過ぎる輝きに、僕は目を細める。
 結局、ジェイドは来なかった。ピオニーも来なかった。カドガンだけが僕を探し出して隣にいてくれたが、彼のことは眼中になかった。僕が一番隣にいてほしい人たちは、みんな僕の傍から離れていったのだ。
 カドガンは話した。ピオニーがフォミクリー実験の中止を皇帝陛下に進言すると。もうこの国で研究を続けることはできない。ネビリム先生を蘇らせることはできない。
 どうしてなんだ。どうしてジェイドもピオニーも、僕に先生を復活させることをやめさせようとするんだ。先生が生き返れば、みんな幸せになるのに。誰一人欠けることのない、幸福な子供時代が蘇るのに。それをみんなは望んでいないのか。あの楽しかった過去を取り戻したいと思っているのは、僕だけなのか。
 それなら、それなら僕はこの国を出る。友達から離れても、故国を裏切ることになっても、僕は研究を続ける。何を犠牲にしても先生を復活させる。
 そしていつか、先生の手を引いてマルクトに戻るんだ。そうすればきっとみんな目を覚ましてくれる。ジェイドと一緒に、ピオニーとネフリーのいるケテルブルクに帰るんだ。みんなであの懐かしい雪国で、いつまでも笑いながら暮らすことを夢見て。
 僕は立ち上がり、埃を払う。表情を引き締め、朝日に背を向けて歩き出した。ジャスパーに名前を呼ばれたが、無視して波止場を去った。
 一日でも早く、僕は実験を再開せねばならない。今は一秒でも時間が惜しかった。
 最後に、施設から完全に研究が引き払われる前にやることがある。少々法と道義に反するが、目的のためなら仕方がない。手段は選んでいられない。
 すべては、僕を見捨てたジェイドを再び振り向かせるために。
 僕は道を急ぎ、研究院を目指した。



 夜が明けても、サフィールは戻ってこなかった。少々面食らいはしたが、私はすぐに冷静さを取り戻した。
 まぁ、せいぜい今日中には帰ってくるでしょう。
 そんな甘い見立てで、ジャスパーの言葉も聞き流した。サフィールが国を出る? 今まで私の方針に反対したことのない彼が、そんな強い意志を持てるはずがない。これは彼なりの脅しなのだと、軽く受け止めた。
 その日、グランコクマには珍しく雪が降った。急に気温が下がり、雨が雪に変わったのだ。首都の人々は珍しがったが、故郷で嫌になるほど見ている私は何の感慨も得なかった。
 そうしているうちに、一日が過ぎた。意外にも、サフィールはまだ戻らなかった。
 やがて、一週間が過ぎ、一か月が過ぎ、一年が過ぎた。
 十年が過ぎても、サフィールが戻ることはなかった。



 十四年が経ち、ようやく再会した時には、彼はサフィールではなくなっていた。
 その時になって彼を強く引き留めようとしても、妄執に取りつかれた彼はもはや私の言葉に聞く耳を持たなかった。
 ああ、もっと早く、彼を呼び止めていれば。
 私は幼馴染を説得しなかったことで、自分がさらに罪を重ねてしまったのだと悟った。
 ふと、私はあの決別の夜のこと、その次の日の曇天のことを思い出した。
 鉛色の空から舞い降りる細雪。
 せめて、一日早く、あの雪が降っていたら。
 そうすれば彼の足を留め、私の足を彼のもとへ向かわせたかもしれないのに。
 すべては自分の心に猶予を与えた私への罰だと分かっていながらも、そう思わずにはいられなかった。
 


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 あとがき

 ここまで読んでくださりありがとうございました! すべてはフォロワーさんが「遣らずの雨って言葉好き」とつぶやいたこと、ジェイドとディストが袂を分かった時の心情を考えていたらちょっと自分の中で疑問が湧いたことから妄想が広がり、小説の形になりました。
 それともいうのも、どうして「追憶のジェイド」にてジェイドはディストを引き止めなかったのだろう、自分が正しいと気付いたことを悟らせようとせずあっさり見離してしまったんだろう、と不思議に思ったんですよね。ピオニーが自分に対してそうしてくれたように、ジェイドもディストを諭す努力をしていれば何か変わったのかもしれないのに…と。(本当は描写されていないところで長い問答があったのかもしれませんし、ディストがあまりにも早く行動したのでジェイドもピオニーも追いつけなかったから、というのもあるのだと思います)
 そこで思ったのは、長い付き合いだからこその油断が生じたのではないかと…ということでした。きっと呼び止めてくれるだろう、きっと戻ってくるだろう、と今までのお互いを信じた結果がああなってしまったのだという…ディストが生まれて初めて抱いた強い意志を前に、ジェイドもピオニーも彼の行動が予測できなくなってしまったんですね。だからディストを強く呼び止めなかったのではないか、と考えました。
 という妄想です! 捏造しまくってごめんなさい。単に、雪国組は擦れ違っていたらいいな…という願望でした。お目汚し大変失礼しました!
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