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Float/World

成人済み腐女子の雑記帳。初めての方は''このサイトについて''をご覧ください。

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沖縄日記

 行った場所で名前が分かっているところ https://www.google.com/maps/d/u/0/edit?mid=zwXzZhAijZdQ.kazdRbLpvRTY

 一日目の昼食として、空港内のA&Wという沖縄名産のハンバーガー屋さんで、一番人気のバーガーととても美味しいと聞いたオレンジジュースを買う。レンタカーの後部座席に乗り、車窓の景色を眺めながらそれを食べる。オレンジジュースはオレンジ特有の酸っぱさがそれほど主張してはいずしかし砂糖のそれとも違う嫌味のない甘さで思わず声を上げるほど美味しく、バーガーのほうはフレッシュな素材の味を生かしたあっさりとした味付けでこれまた美味で、すぐに平らげてしまった。

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 車の外には沖縄ならではのものがいくつも見られた。道路脇に植えられたパイナップルに似た実をつける南国の木、アメリカ軍保有を示すYナンバーの車、店や民家の軒先にシーザーの置物、宴会を催すという大きな墓、本土では見たことのないコンビニ、台風に耐えるための平たい屋根の建築、風に揺れる想像より背の高いサトウキビ畑…。ただ、人間の生活圏内らしい雑多な施設に溢れているのも事実で、観光名所としての面は一面に過ぎず、それ以外の部分は地方都市と変わりないのだということを徐々に理解していった。
 車に乗ってすぐ降り始めた雨は強さを増し、残波岬に着くころには台風の中のように風を伴って激しく叩きつけてきた。溶岩の中を歩き至った岬には青い海から波が打ち寄せ、遠くの方は白くけぶっていた。白い灯台と和服を着た人物の像、台風で動いたという大きな岩以外に視界を遮るもののない岬は天気の良い日には大変美しい場所なのだろう。しかしこの時は雨風に逆らって歩くのが精いっぱいで、風景を楽しむどころではなかった。一緒に来た人たちとホットリミットごっこをしながらも、この旅大丈夫なのかな…、という微かな不安を覚えざるを得なかった。本土の人間にとってこの荒っぽ過ぎる歓迎は、強烈な洗礼として全身を湿らせる結果に終わった。

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 だが沖縄の空は私たちに味方した。再び車に乗り宿を目指していると、雨は止み雲の隙間が見え始め、次第に青空に変わっていった。道中何度か通り過ぎたビーチを見かけて、同乗者の方がどこか寄らないかと提案する。日の落ちる前に、晴れている間に、海で写真を撮りたい。私たちは賛成し、人気はないもののきちんとした駐車場のある小さなビーチに停まった。

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 暮れなずむ空と海を背景に、私たちは思い思いに写真を撮り、波に足を浸し、沖縄の自然と触れ合った。この砂浜に降り立って初めて、私は初めて沖縄に来たという実感を得た。足の裏に感じる砂粒は心地よく、透き通った海水は美しく、何度も膝まで浸かっては波打ち際に戻るのを繰り返した。日が沈んでから薄暗くなるのは早く、ほの紫の空に満月に近い形の美しい月が浮かんだ。砂浜に別れを告げ、自販機で買った水で足を洗った。

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 宿は標高の低い山の上にあった。引き戸のついた門をくぐると、そこには赤い瓦屋根の平屋の古民家が。縁側と日本家屋らしいガラス戸の向こうに暖かい明りに照らされた室内が見え、私は思わずただいま、と言っていた。中に入り荷物を入れ、しばらく室内を見て回る。柱や床の木、畳の質感、年季の入った調度品ならではの艶、台所のアットホームさ、ホテルとは違った心配りのアメニティの数々。何より私たちが惹かれたのは縁側だった。庭に向って張り出したその部分に座って足を投げ出す。視界に入るのは芝生と岩とシーザーの置物と彼岸花。家の屋根と同じ瓦を乗せた塀の向こうには、ぽつぽつと民家の明かりがともる夜景。そして、上を見れば、中秋の名月の一日前の美しい月が、雲の中に浮かんでいる。夜気は涼しく心地よく、自分を包む非日常の世界の美しさに、「来てよかった」と漏らしていた。

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 宿の中の探検を一通り終え、夕飯の買い出しのため再び車へ。地元のスーパーでカートを押しながら決めたメニューは、焼きそば。6人分のそれを作るための野菜や麺や肉、付け合わせのサラダや刺身、つまみのチーズちくわの材料などをかごに放り込んでいく。店内には沖縄ならではの野菜や麺の種類、ちんすこうなどのお菓子や大量のスパム、シークワーサーやサンピン茶といったペットボトル入りの飲料など、本土民には新鮮な品がいくつも溢れていた。私は今宵の酒は沖縄名産オリオンビールと決め、缶一本を買い求めた。レジで対応してくれたのは地元の同級生とみられる清潔感のある少年二人で、彼らに商品をレジ袋に詰めてもらい、買い物を終えた。
 宿に戻り、交代で風呂に入ったり夕食の準備を進めたり、今日撮った写真を見返したり雑談に花を咲かせながら思い思いに過ごした。宿泊客が書き込むためのノートが置かれており、それに友達が絵を描いていた。料理をしてくれたのは関西出身の男性二人で、FateのBGMを流しながらの作業は非常に様になっていた。風呂が私の番になり、入ると中は広く湯船もあり、シャワーは二つついていた。急いで洗ったつもりだったが、風呂を出ると食事の支度はほとんど終わっており、手伝えなかったことを申し訳なく思った。席につき、乾杯。大皿に用意された料理をそれぞれの皿に取り、談笑しながら食べ進める。まずは自己紹介。皆が活発的な趣味について語るのを聞きながら、何も誇るものを持たない私は少しだけ肩身が狭かった。静岡の高専に3年間在籍し、趣味は読書と同人音楽と映画を観ること。それでも、5人は様々に相槌を打ってくれたり話を広げたりしてくれ、あまり趣味を認められたことのない私は、とても嬉しかった。共感とか賞賛が欲しいわけじゃない、ただ否定せず聞いてもらえたらそれでいい。今まで人の輪の中にあってもあまり自分を主張せず受け入れられることもなく生きてきた私にとって、この旅で誰かが話しかけてくれたり私の言葉を捉えてくれたりすることは非常に珍しいことであり、つい舞い上がって要らないことまで言ってしまうという失態も犯したりもした。旅と言う非日常、南国の大気の中に身も心も解き放たれたあまりの失言だと思って許してもらえればと切に願うが…。
 夜が深まっていくにつれて皆が席を離れて自由に話すようになり、その中で私は嬉しい言葉をふたつもらった。一つは、同じ静岡出身の友達の口から出た、私の雁夜くんに対して語っているのは良い、という趣旨の言葉である。それまで私はTwitterで妄想と公式の区別がつかないような妄言を好き勝手呟き、原作を汚し、ファンにも非ファンにも失礼な振る舞いをし続けてきたと思っていたから、まさか私のそれらを読んでくれている人が好意的に受け取ってくれているとは夢にも思わなかったのだ。雁夜くんの性格や過去を考察し、何が好きか何を持っているかを想像して同じものを集めて嗜み、自分の中の雁夜くんに肉付けをしていくような作業的思考は私の趣味と言ってもよく、しかし決して他人には受け入れられるようなものではないと常々思っていたため、彼女の言葉は衝撃にも近かった。そのときはじめて、私は、ああ、いいんだ、と思うことができたのである。彼女のように捉えてくれる人もいる。行き過ぎは良くないことは確かだが、こんなふうに自分の趣味を否定も無視もせず微かにでも好ましく思ってくれている人が居るという事実は、私を幾分か安心させた。彼女には感謝したい。
 もうひとつは、旅行の企画者の方の言葉。彼がくれた言葉の数々は私の価値観を根底からひっくり返すものであり、負の連鎖に陥りかけていた思考を広い世界から差し込む光で照らしてくれた。詳しく書くのは機微に触れるので憚られるが、主旨は個人的な日記に覚えている限りすべて書き留めてあるので心配はいらない。とにかく、私は思い知ったのだ。人と話すことの大切さ、見識を広めることの重要性、そのかけがえのない価値を。彼には感謝が尽きない。つまらないことで悩み続ける私にたくさんの言葉をくれた。広い世界に目を向けさせてくれた。この夜の貴重な教訓を裏切らないように、頑張ろうと思う。
 惜しむらくは、縁側で彼と話している間に中で夕食の片づけがすべて済んでしまったことだ。私が気が付いて戻った時には、布団さえ敷かれていて、同行者たちの手際の良さと自分の気の利かなさに二度ため息を吐くことになった。
 薬を飲んでからの記憶は薄く、布団に横たわった記憶さえない。この夜は薬の効きが早かったようだ。とにかく、私は自分でも知らぬ間に眠り、沖縄での一日目を終えていた。

 翌朝、風がガラス戸を揺らす音で目が覚めた。まだ眠っていたいな、と思いながらも意識は朝へと浮上する。私のほかに起きていた関西出身の男性の方に倣い、私も体を起こす。ふたりで縁側まで行き、少し話し、また中に戻ってきた。私は再び押し寄せた眠気に勝てず、二度寝してしまった。
 目を覚ました時には、私の隣の人以外は全員起きていて、私も時間をかけて起き上がった。コスプレを撮ってもらう予定があるため、顔を洗い、化粧を始める。女子高生になった私は、カメラマンさんに縁側や庭で写真を撮ってもらい、自分の姿勢の悪さやポージングの甘さに辟易としながらも、沖縄ならではの作品を残すことができた。
 そうこうしている間に、他の人たちは宿を出るための支度をほとんど終えてしまったというので、また申し訳なく思いながら、私も急いで荷物をまとめた。忘れ物が無いことを確認して、皆で縁側に出る。最後に、集合写真を撮ろうと提案した。縁側に並び、三脚を使って写真を撮る。私たちの頭上では、天気予報の外れた空が青く輝いていた。

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 宿に別れを告げ、向かうのは古宇利島。海中道路を経て至る美しいビーチを持つ島である。そこで海水浴をするため、男性たちは途中イオンに寄り、サンダルや水着を買い求めた。店内でブルーシールの店舗を見つけ、そこでシークワーサーアイスを買う。さわやかな柑橘系の味は他のフルーツのそれとは異なり、後味もすっきりとしていてしかし酸っぱいわけではなく、非常に好ましい味わいだった。ほかの方が選んだサトウキビ味を賞味させてもらうなど、アイスを堪能し、再び車へ。

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 古宇利島が前方に見え始めると同時に、そこへまっすぐに伸びる道路、そしてその両脇の美しい海が目に入った。

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 沖縄の海と言うのは不思議なもので、比較的水深の浅い澄んだ青緑から混じりけのない青へのグラデーションで成っているのだ。更にその色彩を引き立たせるのは踏むとざくざくと鳴る砂やサンゴの欠片が敷き詰められた砂浜で、これがまた鮮やかな黄土色をしていて南国らしいのだ。波打ち際から少し離れたところには変わって真っ白な細かい砂が輝いており、浜辺の朝顔のような美しい緑がその上を覆っていた。強い日差しの下、すべてが色鮮やかに見える世界を、私たちはビーチに向って進んだ。昨日の夕暮れの海も哀愁があって美しかったが、すべてが生き生きとして見える真昼の海はやはり魅力的で、人や風景に向けて何度もシャッターを切った。岩の上に立ったり、昨日の海寄りは冷たい波に足を洗われたり、水をかけあって遊んだりしているうちに、時間が訪れる。潮の満ち引きか風の関係か最後には波の強くなった海を去り、車へ戻る。宿で用意した水道水で足を洗い、出発すれば、目指すのは別れの場所だった。

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 道が混みあっていたこともあって、慌ただしく那覇空港に乗り入れ、関東へ帰る三人が放り出された。短く別れの言葉を交わし、急いで窓口へ。手荷物を預けた先の小さな土産物屋でそれぞれ土産を買い、搭乗口に向かった。私と静岡の友達は席が隣同士で、飛行機の中までも一緒にいられたが、もう一人の男性の方とはそれきり離れることになってしまった。彼とちゃんと挨拶をできなかったことが悔やまれた。
 帰りのフライトでは、徐々に朱色から紫へ、紫から暗色へ落ちていく世界の中、眠ることもできずただぼうっと音楽を聴いていた。用意していた本は行きの便の中で読み終わってしまっていたのだ。沖縄で体験したこと、もらった大切な言葉が頭の中を巡り、それほど退屈はしなかった。飛行機が高度を下げ、地上へと迫る。窓の外には光る宝石を細かく砕いて洞窟の中に配置したかのような美しい夜景。地上から見る夜景と違い、より高い場所から見下ろすそれは自分と言う存在の小ささを思い知らせるものであり、私は帰路につきながらにして再び非日常の感覚にとらわれていた。この美しい刹那の光景を誰かに見せたい、と思っていたら、何故か飛行機の機首は上がり、しばらくしてアナウンスが流れ始める。空港上空に発生した霧により着陸をやり直すことになったらしい。終電に間に合うのか、と不安を抱き、着陸し飛行機を出てすぐ電車の時間を調べた。なんとか、最速の便で行けば終電には間に合うようだった。友達と同じ成田エクスプレスに乗車、違う駅で降りるため彼女とは窓越しで別れ、新幹線のホームを目指す。無事に帰るまでが旅だ、と言い聞かせながら辿る道筋は、日常の中に戻っていく作業のようで、少し寂しくもあった。新幹線に無事乗車、充電と戦いながら三島に至り、乗り慣れた東海道線に乗り換えて実家の最寄り駅に向かった。私を迎えた故郷は、いつもの闇、いつもの匂いでそこにあり、そこで私を待っていてくれた親の車に乗り、家の玄関をくぐって、私の旅は終わった。
 良い旅だった。来てよかった。その二言に尽きると言って過言ではない。多くのものを得た。それは日常の中、地元で限られた人々と交流するだけでは手に入らなかった体験だ。はらはらすること、やってしまったなと思うこともたくさんあった。それでも、これが私の旅だったのだ。私はこれを肯定するし、反省すべきところは反省して次回に繋げていく。旅は、人生を一歩進ませるためのものだと思う。違う土地に足を運び、珍しい人と言葉を交わして、そこで非日常の中で解き放たれた自分を発見して明日からの日常に生かしていく。私なりに見出したこの意義が果たして正答かどうかは分からないが、ともかく私にとって旅がもたらしうる効果を初めて学んだ。
 旅をしよう。これからも、行き詰っていても、行き詰っていなくても、時折、外の世界を見に行こう。私は何度だって人生をやり直すのだ。行って、帰ってくるたびに、私は何度でも生まれ変われる。
 世界に向って旅立ったある人のように、私もいつか再び海の向こうの最愛の地を踏めることを願って。




 *他の人の撮ってくれた写真コーナー*

 あらなぎさん

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 すごい上手!

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